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| Artist: | Shimizu Etsuo (1953- ) — 清水悦男 |
| Title: | The Painter — 舫 |
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| Date of first edition?: | 1998 |
| Publisher (first edition)?: | Self |
| Publisher (this edition)?: | Self |
| Medium (first edition): | Oil painting |
| Medium (this edition): | Oil painting |
| Format (first edition): | Large Oban
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| Format (this edition): | Large Oban |
| DB artwork code: | 45472 |
| Notes (first edition)?: |
個展の声 少女との出逢いは鮮烈だった・・・・・清水悦男 七年前、住み慣れた東京から湘南の藤沢に居を移して、約二年間、良いモデルが見つからず、気候の良さも手伝って、ボーッとした毎日を送っていた。そんなある日、いつものように買い物をすませ、バイクに乗ろうとした瞬間、私の眼は通り過ぎる一台の車に釘付けになってしまった。車窓から身を乗り出している少女の顔が、一瞬、発光して一筋の光の糸を引いたかに見えたからだ。偶然にも、同じデパートで買い物をするために車を降りた母親と少女の後をドキドキしながらつけていき、その仕草をしばらく観察した後、思い切ってモデルの話を切り出した。思えば冬、二月半ば、黒い革ジャンを着た、髪の短い、ひげ面の男の突然の申し出は、ほぼ脅迫に近かったに違いない。だが運よく、数日後、趣味で絵を描かれていた父親の理解もあって、快い返事を頂いた。 あれから早五年、未だに、あの時の輝きと、少女特有のある種の曖昧さを持ち合わせたまま成長する花歩ちゃんを、ほほえましく、そして時に戸惑いながら描き続けている。 今回、私にとって第二の故郷ともいえるこの名古屋で、そうした日々の奮闘の成果をご覧頂ける事が何よりも嬉しく、今後の励みにしたいと思っている。 ~“繪”(日動画廊発行/1996年5月号 no.387)より引用~
当出品作品は上記資料でも作家が語っているおなじみのモデル“花歩ちゃん”を描いた作品で、オール読物(文芸春秋刊)1998年11月号の表紙の原画です。担当した1997年1月号から1999年12月号までの表紙画のなかでも、当出品作品が他の表紙画に比べて少し大人っぽく描かれているように見えるのは、少女が抱えている本が外国のもの(アルファベットのタイトル)であることを清水悦男画伯が考慮したことによるものではないかと想像できます。 ※“オール読物“1998年11月号はコピーしか所有していないため画像を掲載しておりません。
制作から16年ほど経過したこの作品は、画面に絵具の縮みによる表面層のヒビが見られましたが 作家に依頼して修復していただき、作家が「これで完成」としたものです。 また、この作品は過去に三越百貨店で販売されたものです。
【作家名】 清水悦男 【作品名】 舫 ※真作を保証します※ ・オール読物1998年11月号の表紙原画です(表紙のコピーをお付けします) 【作品について】 ・サイズ・・・8号:画寸タテ44cm×ヨコ36.5cm ・技法・・・・キャンバスに油彩 ・署名・・・・画面右下にサイン、裏木枠にタイトル、箱に三越シール ・状態・・・・概ね良好(ヒビ割れを作家に修復していただきました) 【額縁について】 ・サイズ・・・タテ63.5cm×ヨコ56cm ・状態・・・・だいぶキレイですが、若干のスレ・キズがあります ・箱・袋・・・布タトウ箱・黄袋 |
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| Notes (this edition)?: |
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| Artist Bio: |
1953年 長野県に生まれる
1980年 独立美術展に出品
1981年 多摩美術大学大学院修了
1983年 飯田画廊にて個展(1984年、1985年)
1986年 日本橋三越にて個展
1987年 飯田画廊にて個展(1989年、1991年)
1992年 東京セントラル美術館油絵大賞展招待出品
1993年 飯田画廊にて個展
1996年 日動画廊(名古屋)にて個展
1997年「オール読物」の表紙絵を担当(~1999年)
1998年 日動画廊(福岡・名古屋)にて個展
1999年 日本橋三越にて個展
2001年 うめだ阪急・池袋西武にて個展
2003年 ニューヨーク・ハマーギャラリーにて個展
2004年 近鉄本店(大阪阿倍野)にて個展
2007年 丸井今井(函館)にて個展
2009年 丸井今井(札幌)にて個展
最初に作品と画家に出会って以来、どういうわけか、戦後新世代の画家清水悦男と、イタリアの16世紀の画家カラヴァッジオのイメージが重なり続けている。
ブドウの葉を明解鮮明に描きあげた静物はじめ光と闇の人間表現は日本でもよく知られている。写実主義の先駆者、バロック絵画の開拓者として、一時代の絵画潮流を変えた画家の画風は人気が高い。
その画風との共通点もむろんだが、伝えられているおよそ画人らしくない波乱に富んだ生涯を送ったという人柄の方も重なるように感じる。決闘事件にかかわり、ローマからシシリーへ、地中海を転々としながら教会に作品を描き、ローマへ戻る途次病に倒れた。今は足跡と作品を訪ねる巡礼も続けられる。黙々とアトリエで制作する芸術家のイメージからはケタ外れともいえる画人の性情や生き方は、おそらく明快颯爽たる画風とつながりが深いだろう。そうした既成の芸術家の観念のカラを破る雰囲気が現代画家清水と重なっているからかもしれない。
戦後生まれの清水は、生まれながらの画家のように抜群の技を駆使して、この世のさまざまな事物を絵画に繰り広げていく。静物も花々も女性たちも、どんな対象自在に描き上げてしまう技術は並外れて、明解颯爽としている。続々と名手が輩出しつつある現代でも優れた絵画表現の生み手だ。
瞬時のきらめきを捕まえたいと語る画家はまた、難しい絵画思想をもつわけでもないとも語る。しかしこの画集に収められたその作品をたどるだけでも、この世の讃美者である画家が、その想いを伝える確固たる絵画手法を築き上げている強固な意志を感じる。
とらえどころのないこの世の素晴らしいイメージを、なんのためらいもないかのように、描き切ってとどもていく颯爽たる姿勢には、我々が芸術家に抱く古い観念を超えるものを感じる。”画は人なり”と東洋では言われてきた。新しい時代の人間の手による新しい絵画表現、清水の登場は、そうした期待を抱かせる。戦後世代によって始まっている絵画変革の担い手の一人による絵画の冒険は今後いよいよ大いなる楽しみである。
~村瀬雅夫・福井県立美術館長~『清水悦男画集』(飯田美術発行・1995年)の巻頭の言葉より |
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